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ランデックスコート 難燃クリア開発プロジェクト

世界初の透明性の高い難燃塗料の開発を
5年もの歳月を経て成功に導く。

大丸興業では2017年9月、世界で初めて透明性と難燃性を兼ね備えた水性塗料『ランデックスコート 難燃クリア』の販売を開始した。木造建築物の建材をはじめ、紙や繊維、ゴム、プラスチックなどを“燃えにくくする”力を持つこの塗料、最大の特徴はほぼ透明であるがゆえに、塗布したモノの風合いを損なわないという点にある。
開発には大日技研工業と帝人、大丸興業の3社が参画し、その中で大丸興業は総販売元として販売の旗振り役を担っている。今や日本はもとより世界各所から引き合いが来ており、高い期待が寄せられている『難燃クリア』だが、この栄光に至るまでは5年もの歳月に及ぶ“産みの苦しみ”があったという。大丸興業側の開発メンバーの一人としてプロジェクトを見守ってきた平井に、試行錯誤の5年間を振り返ってもらった。

  • 平井 久人

    平井 久人

    産業資材部 東日本資材チーム

    ※掲載内容は取材当時の所属部署・職種に拠る

神社境内の火事を防ぐために開発が始まる。

平井は1990年に入社して以来、そのキャリアの多くを化学品関連の事業にささげてきた。樹脂メーカーからプラスチックの原材料を購入し、成型メーカーなどに販売する。そして、成形されたプラスチックを買い取って、別のメーカーに届けていく。まさしくモノの循環にかかわる商社らしいダイナミックなビジネスに、平井は全力を投じてきた。
時には、新製品の開発に挑む機会も少なくなかったという。大丸興業ではモノ作りの多様なスペシャリストたちとのネットワークを有している。その豊かな人脈を活用すれば、新しいモノ作りにつきまとう困難を乗り越えるための“ヒント”が見つかるのだ。『難燃クリア』に関しても、異なるメーカー同士の出会いをつなげていくことで、問題解決策を提示してきた。
「開発元である大日技研工業は、化学品原料の取引でかねてからお付き合いがありました。小回りの利く丁寧な対応を心がけていたのが評価されたのか、2012年に新しい難燃塗料を作るためのパートナーを探してほしいとの相談を持ち掛けられました」
と平井は当時を振り返る。このプロジェクトの事の始まりは、神社の境内でタバコが原因の火事が数多く発生していたことにあった。既存の難燃塗料で対策を講じようとすると、塗った後にテカテカとした光沢が残ってしまうなどして、神社の木造建築ならではの厳かな風合いが損なわれてしまっていたという。この問題を解消するべく、透明性を兼ね備えた難燃塗料の開発がスタート。平井はまず、開発にふさわしいパートナーに声をかけていく。

何度やっても透明にならないジレンマに陥る。

何度やっても透明にならないジレンマに陥る。

難燃塗料の核となる難燃剤の調達先としては、取引のあった帝人に白羽の矢が立てられた。優れた難燃剤を有する帝人が、開発にも積極的に参加してくれるとあって、順風満帆な船出となると思われた。しかしながら、初期段階から難航に次ぐ難航だったと平井は振り返る。
「難燃剤を入れすぎてしまうと白くにごってしまって、全く透明にはならなかったんです。かといって難燃剤の濃度を薄めてみると、今度は塗布した素材が簡単に燃えてしまう問題が発生。何十回ともなく配合試作を繰り返しましたが、ことごとく失敗が続いてしまう毎日でした」
解決策が見つからないまま時が過ぎ、2年後の2014年、期待すべき発表がなされた。帝人が新しい難燃剤を上市したのである。燃えにくさが高まったこの新難燃剤ならば、求める透明性が発揮できるのではないか。そんな淡い期待を胸に、平井は新難燃剤の試作を見守っていた。
「けれども、結果はまた同じ。何度、実験しても白くにごってしまう問題から逃れられませんでした」
新しい素材を使っても不可能ならば、そもそも透明な難燃剤など実現できないのではないか……。諦めムードも漂っていたが、それでもなお、平井らは開発の灯を絶やすことなく、地道に支援活動を行っていった。

“奇跡の配合”にたどり着く。

“奇跡の配合”にたどり着く。

どうにも問題が解決しなかった2016年末、平井たちは試しにとある提案をしてみることにした。別のところで取引があった昭和電工が生産するアクリル樹脂の活用を促してみたのである。
「異なる素材を入れて“屈折率”を変えれば、最初は白い液体も時間の経過で透明になることがあります。木工用接着剤が水分を含むと透明になるのと同じと考えればわかりやすいでしょう。屈折率を変える素材に関しては何度も提案をしていたのですが、過去の試作ではいい結果は出ませんでした。しかし、昭和電工のアクリル樹脂は、通常と比べて塗料に混ざりにくいという性質を持っていましたので、“ものは試しに”という軽い感覚で紹介してみました」
 平井の予想はいい意味で裏切られる。アクリル樹脂を混ぜた難燃塗料が、見事に透明になったのだ。過去、透明になったはいいが、温度が上がると樹脂が“ダマ”になって使えなくなるケースもあったというが、今回はその問題もクリア。“奇跡の配合”だ。研究者たちからは驚きと称賛の声が上がった。

世界からもオファーが殺到。

実験が成功をしてからの展開は早かった。結果が確定してから半年後には大日本技研が特許を取得、それが2017年3月のことで、同年9月の販売に向けて平井は急ピッチで販売体制構築に取り組んでいく。カタログの準備に始まり、テレビの情報番組へのPR、業界紙の1面掲載など、共同開発した2社の力を借りて、さまざまな仕掛けを展開していった。
ニュース等で話題になったこともあり、9月の発売以来の約4カ月間で問い合わせ件数は200件を超え、日本のみならず、インドや中国、台湾、アメリカ、トルコなどからも引き合いが寄せられている。用途としても建材を主にイメージしてきたが、思わぬところとの話が持ち上がっている。実際、宇宙開発から演劇のホール、電化製品の部品に至るまで、可能性は大いに広がっている。
「最初は経営陣もどこまで売れるのか疑問視していましたが、これだけ反響が大きいと一転してかなりの期待を寄せられるに至っています。社内的にも3カ年計画立案などが求められようになり、各地を飛び回って忙しく『難燃クリア』のPR活動をしています。」と平井はうれしい悲鳴を上げている。

偶然を必然に変えるために。

偶然を必然に変えるために。

『難燃クリア』が本格的に世に普及していけば、社会的問題の解決の一助となることができるという。例えば、国内の火災による死者約900人中、70%が高齢者で占められるが、逃げ遅れがその原因の一つに挙げられる。『難燃クリア』によって木造住宅の難燃性が高まれば、燃え盛る建物から避難する時間を確保することができるだろう。ひとの命を守ることにもつながるだけに、販売の責任者たる平井のモチベーションは高い。
こうした価値ある製品を世に送り出すことができたのは“たまたま”にすぎないと平井は謙遜する。確かに難燃剤を提供した帝人や、解決の鍵を握ったアクリル樹脂を提供した昭和電工とも、“たまたま”仕事上のつながりがあったから紹介できたのかもしれない。だが、普段から多様な企業とネットワークを形成していたからこそ、奇跡的な出会いを生み出せたのも真実だ。商社らしいフットワーク力が、偶然を必然に変えたといえよう。
今後、ゼネコンとのコラボレーションで試験施工をしたり、国内外の展示会に出展したりして、『難燃クリア』の認知度向上を目指していくという。その中での“たまたま”の出会いが、『難燃クリア』をさらなる高みに導いてくれるに違いない。

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